あひ鴨のひとりごと | 相鴨鳥安

 お客様によく「あひ鴨」って何だいってお尋ねを受けます。
「鴨」と「あひる」の合いの子だろって、
なかなかうがった事をおっしゃる方がおいでですが
まったくその通りなんです。

 俗に鴨といえば真鴨を指します。小鴨、かる鴨、おなが鴨、ひどり鴨等々、鴨といっても多様です。
真鴨の雄を俗に青首と呼んでいます。
野鳥ですから秋ともなると狩猟家の好餌でしょう。
一方「あひる」というのは、
従来中国大陸や台湾で家鴨と呼んでいるのがそうです。
外来種とでも申しますか。

 さて相鴨ですが、私共では一口に「ナキ」と呼びます。
鳴鶩(ナキアヒル)、仙台鳴などの名があります。
ガアガアよく鳴くので戦前「トヤ」に入れておきますと、
よく泥棒除けになったものでした。
人間が工夫して造りあげた鴨、それが相鴨ですが、
一説によると旧幕時代の記録に「ナキ」を飼っていた事が残っています。
(この「ナキ」は合いの子ではなく真鴨を永く飼い慣らしてしまったものという事です)

 ご承知のように将軍様が御浜御殿などへ鴨狩りをなさる時、囮というものを使います。
池の面へ降りた野生の鴨の群を池の横へ誘導して
網でつかまえる案内をする役目ですから、
野生の鴨の中から選り出して一年中鶏同様に飼い慣らしていたわけです。
或る日鴨場の下役人やら足軽衆が鴨の渡りがまだ始まらぬ頃、
そっと囮鴨を食べた処、冬にやって来る野鴨より一段と美味しかったので、
いつとはなく御料場役人の手から
世の通人の食べ物に移り変わってしまった
なんて事もあったのではないでしょうか。

 胸肉(ダキ)を皮付のまま分厚く切って
備長炭でジイジイ焼きながら
おろし醤油で食べるのが「鳥安」の看板なんです。
― 四代目 誠之助著

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